7月に入り、円安がどんどん進み、一時的に139円まで上がった時期もありました。
ですが、7月末のFOMCの大幅な利上げの影響を受け、
7月後半に入り、円安が停滞を始めている様子が見受けられるかと思います。
今回は、中央銀行の動きをまとめながら、
改めて金利、為替、債利周りについて考えていきましょう。
ぜひ、参考までに一読していただけたら嬉しいです。
目次
7月の円安の状況について
7月22日の東京市場では、1ドル139円96銭と140円直前まで円安が進みました。
ですが、7月27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げの決定を受けて、28日の東京市場では134円台、29日には122円台と1カ月半ぶりの水準まで円高が進行しました。
この背景で考えられるのは、米国の景気減速観測と米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース鈍化への期待で、米国長期金利が低下したというファンダメンタルズの変化が考えられます。7月27日のFOMCでは、事前予想通りに0.75%の大幅な利上げが実施されたが、FRBはこの先は経済指標次第で利上げ幅を判断していくと、政策姿勢の修正を示唆しました。
その結果、年末に向けては0.5%あるいは0.25%のより小幅な利上げペースとなり、年末には現状よりも1%程度高い、3%台前半から半ばの水準で政策金利がピークに達するとの観測が広まりました。
さらに来年には政策金利が引き下げられるとの観測も広まる中、6月時点では一時3.5%にまで達した米国の10年国債利回りは、29日には2.6%まで低下した。3月以降の急速な円安は、10年国債など米国の長期債利回りの上昇に連動して進んできた面が強いことから、その長期金利の急速な低下が急速な円の巻き戻しを招いているのである。
FOMCとFRBについて
今回は、まずアメリカの政策決定に欠かせない、FOMC、FRB、改めて整理していきましょう。
「FRB」(英語:Federal Reserve Board)はアメリカの中央銀行制度の総称であり、
日本でいうところの日本銀行の機能を果たす機関です。
「FOMC」((英語:Federal Open Market Committee)はFRBが行う各種金融政策のうち、
公開市場操作についての具体的な提言を行う委員会として存在します。
アメリカは、世界の基軸通貨で最も影響力のある通貨「ドル」を持っています。
なので、世界経済がアメリカの政策金利の動向に左右されるといっても過言ではなく、
単にアメリカの金融政策の決定にとどまりません。
FRBが発表する政策金利に基づいて、世界の金融資産が利潤を求めて一斉に移動を開始するからです。
金利政策とフェデラルファンド金利(FF金利)
一般的に、自国の経済政策を実現するための手段として「政策金利」を使うケースが多く見られます。
政策金利とは、政府の意向に基づき、中央銀行が国家全体の金利を操作する際の目標金利を指します。
アメリカも政策実現のための「政策金利」を設定しており、
具体的には「FF金利」(英語:Federal Funds rate:フェデラルファンド)という金利を操作することで
市場をコントロールしています。
「FF金利」とは、銀行間の一時的な資金の貸し借りの際に発生する金利のことを指します。
このFF金利を操作することで、国家全体の資金流通量をコントロールすることが可能となります。
FF金利が上がれば、資金の貸し借りで生じる金利コストが上昇しますので資金が動きにくくなります。また、FF金利が下がれば金利コストが下落しますので借り入れがおこしやすくなり、資金の動きが活発になります。
貨幣の流通量が増加し過ぎるとインフレが起こりやすくなりますので、金利を上げて流通量を抑えるような政策がとられます。逆に、貨幣の流通量が減少するとデフレが起こりやすくなりますので金利を下げて流通量を増やす、といった政策がとられます。
通常、米国の景気が拡大しているときには連邦公開市場委員会(FOMC)はFFレートの誘導目標を上げ、減速しているときには誘導目標を下げます。
7月のFOMC、FRBの動き
FOMC、FRBそしてFFレートを考えた上で、7月のFRBの動きを見ていきましょう。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、7/26、27に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、
フェデラルファンド(FF:米国の銀行が中央銀行に預けている預金(準備預金)を貸し借りする市場のこと)金利の誘導目標について、大方の予想通り、1.50%~1.75%から2.25%~2.50%へ引き上げることを決定しました。
米国は、連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で、連邦準備銀行の準備金の需給を調節し、FFレートの誘導目標を変更することで、金融政策の決定をしています。
例えば「連邦公開市場委員会(FOMC)はFFレートの誘導目標を2.00~2.25%から0.25%引き上げ、年2.25~2.50%にすることを決めました。」などとニュースで報じられた場合、アメリカは景気拡大が行き過ぎないようにするため、FFレートを上げたことになりますので、金融引き締めをしたということになります。
次に、FOMCの声明の景況判断についてですが、
「最近の消費と生産の指標は鈍化している」との認識が新たに示されました。
ただ、雇用は堅調で失業率は低く、インフレは高止まりしているとの見解は、従来通りと言えます。
また、「インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットする」との文言は維持されたため、
引き続き積極的にインフレ抑制に積極的に取り組む姿勢が示されました。
7月の豪州準備銀行(RBA)の動き
RBA(豪準備銀行)理事会をみる上でのポイントですが、
金利政策(利上げ幅など)、インフレ、景気の減速についてみていきましょう。
豪州準備銀行(RBA)は7/6の金融政策決定会合で、翌日物金利と3年物国債利回りの目標を0.1%に維持することを発表しました。金利操作を延長しないようです。
3年国債利回り目標の対象は、2024年4月償還国債のまま変更されませんでした。市場の一部では2024年11月償還国債に延長するとの見方もありました。国債買入れプログラムも継続はするものの、現行の週50億豪ドルから9月上旬以降は40億豪ドルに減額すると発表しています。
また、インフレ率の加速はゆるやかな見方を示していて、
「豪州の景気は以前の予想よりも強く、回復は今後も続くと予想している」と評価しています。
また、「雇用者数はパンデミック(世界的大流行)前を上回った」と、労働市場の強さにも言及しています。
一方、「実際のインフレ率が2~3%の目標範囲内に持続的に収まるまで翌日物金利を引き上げない」
「2024年までにこうした状況になるとは予想していない」と、政策金利据え置きを続ける方針を改めて示しています。
世界的なインフレ上昇で主要国が引き締めに動く中、オーストラリアもその例外であることは意識していく必要があります。堅調な雇用情勢やインフレ上昇を受け、引き締めペースは加速気味ですが、足元の世界経済の成長鈍化もあり、波乱が起きる可能性もあり注意は怠れません。
豪ドルはこのところ対米ドルで一進一退の展開が続いています。
ですが、RBAによる金融緩和のさらなる縮小観測が生じれば、豪ドルが上昇する局面も想定されます。
今後の豪ドルの動きも注意していきましょう。
米国の政策金利と為替レートの関係
改めて、米国の政策金利が引き上げられると
為替レートに影響を与える仕組みについて書いていきます。
結論からいえば、政策金利の引き上げは「円安ドル高」に誘導される傾向があります。
具体例として、定期預金について考えてみます。
例えば、A銀行の定期預金の金利が1%、B銀行の定期預金の金利が3%だったと仮定します。
A銀行で預金を保有している方にとってみれば、金利が高いB銀行に切り替えた方が得だと言えます。
そのため、A銀行の定期預金を解約し、B銀行で新たに定期預金を組むという動きが発生します。
上記の例で言うと、A銀行が景気回復を目指して低金利政策を行っている日本、
B銀行がインフレ脱却のために高金利政策を行っているアメリカと表せます。
低金利の日本円より高金利のアメリカドルで資産を保有した方が儲かることになりますので、
円が売られドルが買われることになります。
その結果、円の価値は下がりドルの価値は上がります。これが今の「円安ドル高」の状態です。
円安が日本経済にもたらす影響:メリット
過去の自動車や半導体の輸出を見てみるとわかりますが、
日本経済は資源を輸入して付加価値をつけた状態で輸出することにより、貿易黒字を生み出してきました。
「貿易大国」として成長してきた日本経済を支えていたのは、長きにわたる「円安状態の維持」が挙げられます。円安により製品のもととなる資源の調達コストは確かに上がります。
しかし、製品に付加価値を付けて輸出することで調達コスト以上の円安メリットを受けることができるのです。
今回の円安推移も、日銀が低金利による景気回復を優先させたことのほかに、
元々円安のほうが日本経済にメリットが大きいと捉えていることが考えられます。
ですが、円安はメリットばかりではなく、メリットとして挙げた輸出によるアドバンテージは
あくまで輸出を行っている企業にその恩恵が大きいというだけです。
そのため、
輸出による恩恵を受けることがない、国内販売がメインの企業や一般の消費者にとっては
円安のデメリットだけが直撃する、状態になってしまうのです。
円安が日本経済にもたらす影響:デメリット
現在の日本経済は、かつてのような右肩上がりで貿易黒字が増加していくといった局面にはないのです。そのため、過度の円安推移が進行してしまうと国内経済に悪影響を与えるだけになってしまいます。適度な円安であれば経済にも少なからず好影響を与えるでしょうが、今回の円安推移はメリットが少ない、あまり良い「円安」ではないと言えます。
これも円安要因が絡んでいます。
事実、産業の主要な資源である原油や鋼材、木材、小麦粉などの輸入価格高騰により、国内の販売価格が軒並み上昇しています。電力や車の燃料、食材など全体的な生産コストの上昇で、企業がコスト増を自社で吸収しきれなくなっているのです。
一つ一つを見れば大きな値上がりではなくても、
積もり積もれば家計への負担は大きなものとなっていくと言えます。
まとめ
今回は、7月の円安の動きと中央銀行の動き、円安のメリット・デメリットについてお伝えしました。
引き続き、各国の中央銀行の動きや円安の流れについて注目していきましょう。
常に、めまぐるしく経済・金融情報が発表されていますが、
一つひとつの情報にまどわされ、焦って感情にトレードをするのではなく、
冷静に中長期的にトレードをしていきましょう。
堅実に、長期的にFXトレードをしたい方は
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